卒業後の進路として選択されることの少ないの珍しいキャリアを考える

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医学部卒業後の進路選択の道は多数開かれていることを以前の記事では説明いたしました。

医学部卒業後ほとんどの医学生さんは、ごく少数の例外を除いて医師免許を取得し、医療業界に携わることになると思います。 そこで今回、医学部...

また、これまでの記事で医学部卒業後の進路選択として、臨床医になる場合、開業医になる場合、研究医になる場合、企業所属の医師になる場合について検証していきました。

しかし、卒業後の進路としてそれら以外の進路をとる医師も少数ながらいます。今回はこれまでに挙げてきた進路以外を選択した場合について検証していきたいと思います。

その他の進路を選択した場合

医学部を卒業したからといって必ずしもこれまでに挙げた進路を選択しなければならないわけではなく、自分の希望次第でありとあらゆる道に進むことができます。

それでは沢山考えられるその他の進路の例を挙げてみましょう。

  • 法医学者
  • サラリーマン(医療と直接関係のない業界)
  • 塾講師
  • 起業
  • 作家
  • ミュージシャン
  • 芸能人等

いかがでしょうか?法医学者に関しては流石に医学部を卒業しないとなれないようなイメージがつくと思いますが、それ以降の進路は別に医学部を卒業しなくてもなれるようなものばかりですね(もっとも、作家やミュージシャンなど、その進路で成功するためのハードルが大変高いものも挙げておりますが)。

私の知人の中にも少ないながら上記に挙げるような進路を選択した人もいます。しかし、あまりにも母集団が少ないため、全てを検証していくのは困難ですのでかい摘んで見ていきましょう。

法医学者になる場合

法医学者とは大雑把に言うと死因の解明を行う医師のことで、監察医と言った方がイメージがつきやすいかも知れません。

しかし厳密な意味での監察医というのは災害死や中毒死などの死因が明らかでない遺体に対して監察医務院で行政解剖を行う医師のことを指し、犯罪性のある遺体に対する司法解剖を行う医師とは分けられます。

しかし、お互いに仕事がオーバーラップしていますのでここではまとめて法医学者と表現させて頂きます。

法医学者の活躍の場は大きく分けると下記の二つになります。

  • 大学の法医学教室
  • 監察医務院(監察医務所、監察医務院室)

通常、法医学者になるためには医学部の法医学教室で大学院生となり、十分に研究と実務の経験を積みます。その後に法医学教室のスタッフとして司法解剖、研究、学生の教育に勤しむのが通常のコースでしょう。

しかし行政解剖に特化して仕事がしたいという場合は、法医学教室での大学院を修了した後に監察医制度のある都府県で監察医として勤務するというコースもあります。

監察医制度はかつて全国7都府県にありましたが、自治体の財政状況などの影響を受け現在は東京(監察医務院)、大阪(監察医務所)、神戸(監察医務室)に存在し、行政解剖を行なっています(名古屋は制度はあるが大学に機能を委託)。

その他の自治体では各大学の法医学教室が行政解剖も兼任している形になります。

それでは法医学者となる進路を選択した場合のメリット、デメリットを検証していきましょう。

  • メリット
    • 大学の法医学教室でのキャリアを選んだ場合は若くして教授になれる可能性が高い
    • 行政や司法との関わりが強くコネクションができる
  • デメリット
    • 一般的に臨床医と比べて給与が低くなる
    • よほど好きでないときつく危険な仕事と感じ長続きしない

医師免許を持つ法医学者は全国で200名以下と言われています。ですので、法医学者の進路を選択した場合、きちんと大学で実務に研究に勤しんでいれば教授になれる可能性は高くなります。

また、行政や司法と密接に関わって仕事をしますので強いコネクションを持つことが出来ます。

しかしデメリットとしては、法医学者の給与は一般的に臨床医と比べて低いうえに、よっぽど死因究明や解剖に強い興味がなければきつく危険な仕事と感じてしまうかと思います。

解剖学の実習と違い解剖に回ってくる遺体のコンディションは様々で、私が学生時代に法医学教室で数ヶ月実習した際に経験しただけでも水死や焼死の臭気の強い遺体や、様々な感染者にかかっている遺体など解剖する上で感染の危険のあるものにも遭遇しました。

そして地域によっては沢山の解剖を少ないスタッフで行わなければならないこともあり、過酷な労働条件となることもあります。

私も一時強く法医学者を目指そうと思っていた時期がありましたが、これらの現状を受け入れた上で目指すべき進路だと思います。

サラリーマンになる場合(医療と直接関係ない業界)

前回の記事で取り上げた進路では、産業医として企業所属したり、製薬企業に所属したりと医師の資格がなければ出来ない職として企業のサラリーマンになるケースを挙げました。

医学部卒業後の進路選択の道は多数開かれていることを以前の記事では説明いたしました。 臨床医として病院やクリニックで、研究医として大...

ここでは、医療と直接関係ない業界で働くケースもしくは医師の資格がなくても出来るサラリーマンとなるケースを挙げていきたいと思います。

この進路で一番メジャーな就職先としてはコンサルタント会社ではないでしょうか?

もっともコンサルタント会社自体は医療系の会社ではないですが、病院の経営等についてのコンサルタントも受けるので医療を学んだ経験のある社員が求められることがあります。

ただし、大手の外資系コンサルタント会社では英語のスキルが問われたり、高偏差値の大学医学部卒しか採用しないなど、フィルターがあるので容易に働くことができるわけではありません。

その他、私の知人の場合ですと卒業後すぐに大手人材派遣会社に就職し営業の仕事をしていたケースや、大手広告代理店に就職したケースが挙げられますが、これはかなり稀な例と言えるでしょう。

それではこの進路を選択した場合のメリット、デメリットを検証していきましょう。

  • メリット
    • コンサルタント会社などでは将来起業する際の人脈作りができる
  • デメリット
    • 同じような進路を選択する人の絶対数が少なくキャリアパスが描きにくい

医学部卒業後、大手外資系コンサルタント会社で勤務していた知人はその後起業し大変成功しております。

また、今勢いのある医師出身の起業家には同様のキャリアを持つ人も多くおりコンサルタント会社での人脈が役立ったものと考えられます。

しかしあまり一般的な進路ではないので、キャリアパスについてなどの情報が得難いのは確かです。

塾講師になる場合

特に入試の偏差値が高い医学部に入学した医学生の中には、塾講師のアルバイトの延長でそのまま塾講師になる人がいます。

私にも医学部卒業後に塾講師となった知人が数人いますが、共通しているのが医学を学ぶことそのものを目的とするよりも、自分の学力を試すために高偏差値の医学部を受験し入学しているというところでしょうか。

私自身も医学部の授業が始まった当初はひたすら暗記することに辟易し、受験勉強の方が楽しかったと思ったこともあります。

そういう気持ちが医学部在籍中にずっと続くと卒業後に塾講師、という進路を取るのかもしれません。

もちろん塾で教えること自体は医学部とあまり関係ないように思えますが、実際に難関の医学部入試を突破した先輩ということで塾の生徒に適切なアドバイスを送ることができ、一定のニーズがあるようです。

それではこの進路を選択した場合のメリット、デメリットを検証していきましょう。

  • メリット
    • 大学入試で学んだ経験を仕事として活かすことができる
    • 実際に難関大学入試を突破したという売りを持って塾講師市場に出られる
  • デメリット
    • 一般的に臨床医と比べて給与が低くなる
    • 少子化が進む日本で塾講師のニーズがいつまであるのか不透明

高偏差値の医学部入試では全ての科目においてトップレベルの高い学力が要求されますが、医学部に入学すると暗記中止の学習中心となり数学の難問を解く能力などはあまり役立たなくなってしまいます。

しかし、塾講師をすることで仮に医学に興味を失っても大学入試を突破するために身に付けたことを仕事として活かすことができます。

また、実際に難関の医学部入試を突破してきたという実績は説得力があり、塾講師をする上で大きな売りになります(厳密にいうと本人が難問題を解けるのと上手に教えるのは別の能力ではありますが)。

しかし塾講師としての給与は塾の経営者も兼ねていれば別ですが、雇われている場合は通常臨床医と比べて低くなります。

また少子化が進んでいき既存の塾も淘汰されていく可能性もありますので、将来にわたって塾講師のニーズがあるかは読めないというデメリットがあります。

以上を踏まえて医学部卒業後の進路として塾講師を選択することを検討してみると良いでしょう。

起業する場合

以前は医師の起業についてそこまで取り沙汰されていませんでしたが、最近はAIや遠隔診療などの分野で医師の起業がクローズアップされている印象があります。

最近私の母校にも起業を支援する体制ができ、医学生ながら起業をされてる方がニュースで取り上げられていました。

医師で起業する人は少なく競合が少ないうえに、診断分野など法律上医師免許がなければ許可されない事業もありますので、他分野での起業に比べて有利になりやすいとも考えられています。

それでは起業する進路を選択した際のメリット、デメリットを検証していきましょう。

  • メリット
    • 競合が少ない中で起業することができる
    • 医師免許がある以上失敗してもやり直しが効く
  • デメリット
    • 起業する医師は少なくモデルケースが見つけづらい
    • 医療業界以外にもコネクションを作る必要がある

メリットとして、上記に挙げたように競合相手が少ない中で起業することができますので、ほかの分野での企業に比べて有利とも言われています。

また、起業に失敗しても医師免許という保険がありますので、いざとなれば臨床医に復帰することも可能です。

しかし起業している医師は少ないためモデルケースを見つけるのが難しく、医学部で普通に生活し卒業するとどうしても医療関係者の知り合いばかりになってしまいますので、学生時代から積極的に外の世界にもアンテナを広げる必要があります。

やり甲斐としてはかなり大きい進路になりますので、起業に興味があれば是非挑戦していきましょう。

その他のまれな進路の例

最後にまれな進路の例として、実際に活躍されている方を挙げさせていただきます。

医師から作家になった例としては、最もネームバリューがあるのは森鴎外氏かと思いますが、最近話題になったテレビドラマ「ブラックペアン」の原作者でもある海堂尊氏(医師としての仕事も継続している)が有名ですね。

私が中学生時代に読んでいた「どくとるマンボウ航海記」の作者、北杜夫氏も精神科の医師でした。

ミュージシャンとしては1960年代に活躍した「ザ・フォーク・クルセイダーズ」の北山修氏が有名です。

また、まれな進路には変わりありませんが、芸能界では西川史子氏をはじめとしていわゆる女医ドルと呼ばれるカテゴリーが出来るくらい医師の資格を持った芸能人は一般的になってきています。

その他の進路のまとめ

以上、医学部卒業後にその他の進路を選択する場合について検証してみました。

上記に挙げたケース以外にも多数の進路が考えられますが、主に今回検証した進路を中心に、タイプ別におすすめの選択をまとめてみました。

  • 死因の究明や行政・司法にも関わりたいタイプ→法医学者になる
  • 他学部卒業生と同じ土俵で勝負したい→医療と直接関係のない業界のサラリーマンになる
  • 受験勉強で身に付けた知識を活かしたいタイプ→塾講師になる
  • 自分でビジネスを生み出し大きなことを成し遂げたいタイプ→起業する

繰り返しになりますが今回挙げた以外にも様々な進路が開かれています。

医学部で生活してみて何か違うと感じることがあれば、卒業したら必ず医師として働かないといけない、という固定観念を捨てて自分のやりたいことに挑戦してみるのも一つだと思います。

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