怪我の処置はどうするべきか?傷口は水道水で洗うのか消毒するのか?出血はどう対処する?

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私たち外科系の医師や救急外来で勤務する医師は、日常的に怪我をした患者さんの傷の治療を行なっています。

しかし意外なことに、働き出してからは頻繁に傷との診察を行う割には、医学部の授業で傷の治療について学ぶ機会というのはあまり設けられておりません。

医師ですらそうですので、患者さん自身も怪我した際の対応などについて正しい知識を得る機会は滅多にないかと思われます。

例えば水道水で傷口を洗うと雑菌が入ると思い、消毒液のみつけて外来に来られる患者さんや、指の怪我で出血した際に指の根元をぐるぐるに縛ってくる患者さんなど、最新の傷の治療からすると誤った知識を身につけてしまっている患者さんも多くいらっしゃいます。

今回の記事では、家庭や屋外で怪我をした際に先ずはどのように対処すべきかを解説していきます。

怪我をした際の傷の種類

手術を要するような大きな外傷については今回割愛させてもらいますが、日常経験するような傷には様々な分類がなされています。

先ず、一般的に「きず」と呼ばれる用語は医学的には「創傷(そうしょう)」と言います。そして「創」と「傷」は以下のように定義されます。

  • 創…開放性損傷
  • 傷…非開放性損傷

専門的な用語ですが、簡単に解説すると「創」はダメージを受けた皮膚が開いて、皮膚の下の組織がさらけ出された「きず」。

「傷」は皮膚が表面的なダメージを受けることで出来た「きず」になります。

創の分類

「創」は基本的に皮膚がなんらかの形で破壊されるので、「傷」よりダメージは大きくなりがちです。

そして「創」は以下のように分類されます。

  • 切創…鋭利な物によって皮膚が分断されてできたいわゆる切りきず
  • 割創…鈍器による衝撃で皮膚が分断されてできたきず
  • 刺創…鋭利なものによって刺されてできたいわゆる刺しきず
  • 挫創…鈍的な力によって皮膚が不規則に裂けてできたきず
  • 裂創…強い力によって皮膚が引き裂かれたきず
  • 杙創…先端が鈍なものに刺されてできたきず
  • 剥皮創…回転するタイヤなどに牽引されて筋肉から引き剥がされたきず

傷の分類

  • 擦過傷…摩擦によって皮膚の表面が削り取られたいわゆる擦り傷
  • 挫傷…挫創と同じく鈍的な力が加わって出来たきずだが皮膚には損傷がない
  • 熱傷…高熱によって皮膚がダメージを受けて出来たきず

もちろん、怪我の仕方によっては複数の傷が組み合わさることもあります。

転んで怪我をした時など、手のひらには擦過傷を負ったのみなのに、膝は皮膚がえぐれて挫創が出来た、などということもあります。

怪我をした際に生じる問題点

怪我をして「きず」を負った際に生じる問題点は色々ありますが、大きく分けると次の2つになるかと思います。

  • 傷口からの出血
  • 傷口の感染

他にも怪我に伴う骨折なども挙げられますが、ここでは軽症でかつ頻度の高いものを挙げさせてもらいました。

それではそれぞれ解説していきましょう。

怪我に伴う傷口からの出血

怪我に伴い、皮膚がある程度の深さまで傷つくと、皮膚に栄養を与える血管も切れてしまいます。

皮膚の中を走る血管は通常は細く、出血している部分をピンポイントでしっかり押さえるとすぐに止まることが多いです。

ただし、場所やきずの深さによってはちょっと押さえたぐらいでは血が止まらず医療機関で止血の処置をしてもらう必要があります。

怪我に伴う傷口の感染

人間の皮膚は、細菌などが体に侵入してくることを防ぐバリアの役割があります。

怪我をして皮膚に傷がついてしまうと、そのバリアが破綻してしまい細菌などの侵入を許すことになります。

通常、人間の体には細菌を含む外界からの異物に対して防御する力がありますので、多少の侵入を許しても必ず傷が感染(いわゆる化膿)してしまうというわけではありません。

しかし、屋外などあまり清潔ではない状況で怪我した場合、怪我をした後に適切に対処しなかった場合は、傷口の周囲で細菌が繁殖して感染を来たすことがあります。

怪我をした際の対処方法

怪我をした際、「傷口からの出血」と「傷口の感染」が生じる可能性があることがわかりました。

それでは、こうした問題に未然に対処するにはどのようにすべきなのかというと、以下の手順を踏むのが望ましいです。

  1. 先ずは傷口を大量の水道水で洗う
  2. 出血している箇所をピンポイントで押さえる

世の中には消毒液が商品として出回っており、傷口はまず消毒という知識が一般的に出回っています。

ただし近年、消毒液が傷口の細胞にダメージを与えること、傷口はしっかり水で洗い流すことが細菌による感染のリスクを下げることが分かっております。

怪我をしたら先ず大量の水で傷口を洗い、付着している菌の量を減らすことが肝心です。

消毒液をちょっと付けたのみで安心し、しっかりと傷を洗って菌の量を減らさないことの方がむしろ危険です。

それではその際に水道水でも大丈夫なのか?という疑問があるかもしれませんが、結論から言うと全く問題ありません。

日本の水質基準はかなり厳しく、水道水で洗ったためにむしろ感染してしまった、などと言うことはまずありません。

また、出血に対しては先述したように、まさに血が出ている場所を押さえること(圧迫止血と言います)が肝心です。

指先の出血などで、指の根元をぐるぐる縛ってくる患者さんがいますが、これは指先がうっ血したり、神経を圧迫して痺れを来したりすることがあるのでやめましょう。

先ずはしっかりと傷口を洗い、その上で出血していたらその場所をしっかりと押さえることが怪我に対する処置としての基本となります。

このように処置を行なったうえでなかなか血が止まらない場合や、数日して傷口が赤く腫れてきた場合は医療機関を受診しましょう。

怪我の処置はどうするべきか?のまとめ

以上、傷の種類からその初期の対処方法に対して解説を行いました。まとめると以下のようになります。

  • 傷口は先ずは大量の水道水でしっかりと洗う
  • 洗った上で出血している場所はしっかり押さえる
  • なかなか血が止まらない場合や傷が化膿した場合は医療機関へ

繰り返しになりますが、怪我をしたら先ずは傷口を大量の水道水でしっかり洗い流し、傷口から侵入してくる菌の量を減らしましょう。

その上で出血があれば、ピンポイントで血が出ている場所をしっかりと押さえて止血を行います。

また、深く大きな切創や割創など、押さえてもなかなか血が止まらない場合、ある程度大きな血管が切れてしまっている場合は医療機関での処置が必要ですので、躊躇せずに受診を行いましょう。

なお、怪我をして数日経過したところで、傷の痛みが増してきて赤く腫れ上がってきたり、熱を持ってきた場合は傷口の感染を示唆していますので、こちらも医療機関で治療することが望ましいです。

怪我や傷の話は奥が深く、今後も引き続き記事を書かせて頂きたいと思います。

参考文献: 

1)日本救急医学会ホームページ

2)アトラス形成外科手術手技, 中外医学社, 東京, 2011

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