三次救急病院での勤務は忙しいのか?実際の現場を解説

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全国の多くの病院が、救急医療を担い救急車の受け入れを行う「救急指定病院」の扱いを受けています。

さらに、各救急病院は、その規模や機能に応じて一次救急から三次救急までを担っています。

のちに詳細を説明いたしますが、簡単に解説するとより高次の救急病院ほどより重症患者の救急疾患の治療を行うことになります。

今回の記事では、私自身が勤務していた経験から、高度な救命救急を行う「三次救急病院」の実際についてお話ししていきたいと思います。

三次救急病院では生命に関わる多発外傷(体の複数の部位に損傷を伴う外傷)や全身の熱傷などを含んだ重症の患者さんが運ばれてきます。

そのような三次救急病院での勤務は忙しく働きづらいのか、実際に勤務を検討されている医学生さんや初期研修医の方の参考になれば幸いです。

三次救急病院とは?

前述の通り、各救急病院はその規模や機能に応じて一次から三次までの救急医療を担いますが、それらは一体どのような違いがあるのか説明いたします。

  • 一次救急…診察後帰宅が可能な軽傷の患者を治療する救急医療
  • 二次救急…入院や場合によっては手術が必要な患者を治療する救急医療
  • 三次救急…二次救急まででは対応出来ない重篤でICU(集中治療室)での治療が必要な救急患者を治療する救急医療

このように、より高次の救急ほどより重症患者の治療を行うことになります。それではどのような病院が一次救急、二次救急そして三次救急を担当するのでしょうか?それぞれを担当する病院はそのまま○次救急病院と呼ばれています。

  • 一次救急病院…急病診療所・救急センターなど
  • 二次救急病院…多くの総合病院、地域周産期母子医療センターなど
  • 三次救急病院…救命救急センター、多くの大学病院、総合周産期母子医療センターなど

上記のように、一次救急は夜間などに軽症でちょっと受診する急病診療所のような入院施設のない施設が担当し、二次救急は入院機能を持つ多くの小~中規模の総合病院が担当するということがイメージできます。

そして、今回のテーマである「三次救急病院」はあらゆる診療科が揃い、集中治療室が整備されてた、その地域を代表するような大きな病院や、大学病院が担当していることが想像できると思います。

三次救急病院にはこのような大きな病院でないと治療が難しい、高エネルギー外傷(大きな交通事故や高所からの転落等)による多発の外傷や、全身の熱傷など、多数の臓器にまたがるような重症の症例を扱っています。

三次急病院の実際

私は初期研修医1年目と2年目、外科の後期研修医1年目の計3年間を、医療過疎地の三次救急病院で過ごしました。

都会と違って複数の自治体にまたがって総合病院が一つしかないような地域でしたので、救急を断るという概念がなく、私の勤めていた病院には軽症から重症まであらゆる症例が集まってきました。

その経験から、三次救急病院の実際について以下の順でお話しします。

  • 初期研修医から見た三次救急病院
  • 外科後期研修医から見た三次救急病院

自分の立ち位置によって、三次救病院に対する見方は変わってきます。それではどう違って見えるのか順に見ていきましょう。

初期研修医から見た三次救急病院

初期研修医の頃は様々な科をローテートしますが、特に三次救急病院で勤務していることを実感するのは、(救命)救急科をローテートしている時、もしくは夜間に救急外来の当直をしている時でしょう。

私が初期研修医として働いていた際、プログラム上、救急科で最低3ヶ月研修するのは必須でした。

また定期的な当直および土日祝日の日直(8:30~17:30までの救急外来勤務)もあり、その際に救急科の指導医と救急外来で勤務し、三次救急病院のいわば窓口を担当していました。

三次救急病院で初期研修をして感じた、メリットとデメリットを挙げてみます。

  • メリット
    • 一般的な研修病院(二次救急病院)で見られないような重症例を経験できる
    • 研修医が終わる頃には数多くのスキルを身につけられる
  • デメリット
    • 要領が良くないと自分のキャパシティをオーバーする
    • 忙しい時は現場が殺伐とすることがある

メリットとしては、やはり軽傷例から重症例まで幅広く救急外来で体験できることです。三次救急病院では重症症例のみならず、一次や二次救急で見るような患者さんも来院しますので、大は小を兼ねるで幅広く診ることができます。

そして研修医も実質の戦力として扱われることが多く、沢山の手技を早い段階で身につけることが出来ます。

私自身は初期研修1年目から、もちろん救急科の指導医の元ですが緊急でAラインやCVカテーテル、チェストチューブを挿入したり、挿管をしたり多数行なっていました。

お陰で初期研修の一年目が終わる頃には、多少の院内急変などでは慌てずに対応することができるようになっていましたし、初期研修医2年目には飛行機内でのドクターコールの対応なども経験しました。

こうした手技はいずれ身につくという意見もありますが、責任をとってもらえる医師の元で早期に身につけるに越したことはないと個人的には思います。

デメリットとしては、様々な救急症例が次々と来るので、要領よく立ち回れるタイプでないと消化不良を起こしてしまう可能性があります。

また、救急搬送などが重なり救急外来が慌ただしくなってしまうと、現場の雰囲気が殺伐とし、出来ることがまだ限られている研修医にとっては居心地が悪くなってしまうこともあります。

以上のように、救急医療が好き、早く手技を身につけて自信をつけたい人にとっては三次救急病院は格好の研修場所となりますが、そうでないゆったりと研修したい人にとっては逆に苦痛となってしまうかも知れません。

外科後期研修医から見た三次救急病院

初期研修が終わり外科のトレーニングが本格的に始まる後期研修医になった際も、勤務している病院が三次救急病院であか否かで経験できる内容が変わってきます。

私は3年間の後期研修のうち、最初の1年間を初期研修を行った病院で引き続き行い、残りの2年間は別の二次救急病院で行いました。

三次救急病院でこの外科の後期研修を行って感じた、メリットとデメリットを挙げていきます。

  • メリット
    • 二次救急病院まででは経験しづらい外科手術を要する外傷症例を担当できる
    • 複数の科にまたがって治療を要する重症症例の緊急手術を経験できる
  • デメリット
    • 重症症例を担当すると昼夜休日関係なく忙しくなる
    • 多発の外傷などで何科が主導を握るのか揉めることがある

最も大きなメリットとしては、多数の外傷に関わる症例を経験できるというところにあります。

特に私の担当分野である外科であれば、腹部の臓器損傷などの緊急手術や緊急の処置などを多数経験することができます。

二次救急までの救急病院では、様々な科が介入する必要のある多発の外傷症例が搬送されることはあまりありません。

様々な科がが介入する可能性のある症例は、そもそも外傷に関わるあらゆる科(脳外科、整形外科、外科、放射線科など)が揃っていなければならず、搬送先も必然的に三次救急病院となりことが多いからです。

外傷で外科的な治療を要する症例は腹部の臓器損傷を迅速に診断する能力や素早い手術手技を要することが多く、通常の外科手術とは勝手が異なり、いくら予定手術の経験をたくさん経ていても外傷の手術を経験していなければ太刀打ちできません。

そして他の科と協力しあって治療に当たらねばならないような症例も多く、科の垣根を越えて教わることのできる立場でもある、後期研修医のうちに三次救急病院を経験しておくことは大きなメリットになります。

その一方でデメリットとしては、予定手術の患者さんを受け持つのと違い、重症例の患者さんは場合によっては毎日つきっきりになって輸液や薬剤の調整を行わなければならず、かなり多忙になります。

また、多発の外傷などで脳外科の介入も必要であれば整形外科、外科も治療に当たらないといけないような患者さんでは、どの科が主導になって治療に当たるのか揉めることがあります。

各科の連携がしっかり取れていなければ、「船頭多くして船山に登る」といった状態になりかねないこともあります。

もっとも、様々な専門を持った救急医が揃った救急科が病床を持つ体制の施設であれば、救急科が主導となって重症症例の治療に当たることになりますが。

三次救急病院での勤務は忙しいのか?のまとめ

以上、メリットとデメリットも踏まえて三次救急病院について解説致しました。

結論から言えば、三次救急病院はかなり忙しいです。救急外来の仕事自体も重症患者が多く運ばれてくるため慌ただしいですし、そういった重症患者さんを受け持てば病棟での仕事も忙しくなります。

ただし、三次救急病院での勤務は忙しい反面得るものも大きいのは確かです。改めてメリットを以下にまとめます。

  • 指導医の助けを得られる立場で重症の症例をたくさん経験できる
  • 数多くの手技を先取りで身につけることができる
  • 複数の科と共同で行う治療を経験することができる

メリットとしてはやはり三次救急病院でしか診ることのできないような重症症例をたくさん経験できるというところに集約できると思います。

自分が指導する立場になって初めて経験するよりは、初期研修医・後期研修医のように指導医が責任をとってくれる状態のうちに経験しておく方が、余裕を持って重症症例の治療に当たることができるでしょう。

以上、忙しいだけでなくメリットも大きい三次救急病院です。ばりばり臨床をやっていきたい医学生さんや研修医の先生は、若手のうちに一度は三次救急病院で経験を積むことも検討してみましょう。

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