初期研修は大学病院と市中病院どちらで行うのが良いのか徹底比較

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医学部卒業後は臨床医を目指して2年間の初期臨床研修(初期研修)を受ける方が大半だと思います。

2004年から医師臨床研修マッチング制度(以下マッチング)が導入され、初期研修は大きく様変わりしました。その影響で研修医を受け入れる病院は大学病院が中心だった従来に比べ大きく増え、研修先の選択肢の幅が広がりました。

それではマッチングとは何か、そして選択肢の多い現行制度のなかでどのような病院で研修することが良いかを検証してみましょう。

医師臨床研修マッチングとは

厚生労働省のホームページより抜粋すると、

「医師臨床研修マッチングとは、医師免許を得て臨床研修を受けようとする者(研修希望者)と、臨床研修を行う病院(研修病院)の研修プログラムとを研修希望者及び研修病院の希望を踏まえて、一定の規則(アルゴリズム)に従って、コンピュータにより組み合わせを決定するシステムです。」

とあります。

簡潔に言うと病院は面接を行った研修希望者に順位を付け、研修希望者は面接を受けた病院が複数である場合は順位を付け、互いの順位がうまく組み合わさることで研修先が決定すると言うシステムです。

いくら希望の病院があっても、病院からの評価が低ければ採用とはならない可能性がありますし、逆に病院が評価を高く付けてもその研修希望者が他の病院の希望順位を高く付けた場合は採用できない可能性があります。

研修可能な病院を分類

研修することのできる病院は、研修医マッチングに参加している大学病院および。厚生労働大臣が指定した臨床研修病院(市中病院)となります。

さらに以下の様に大きく分類することができます。

  • 大学病院
  • マッチング制度以前から研修医を受け入れていた市中病院
  • マッチング制度以降に研修医を受け入れ始めた市中病院

マッチング制度が始まった当初は、以前から研修医を受け入れていた市中病院が圧倒的な人気を誇り凄い倍率となっていました。

また、マッチング制度以前の大学病院へのストレート研修の影響か、現在よりも大学病院へのマッチ率が高かったのが特徴です。

2017年度のデータでは市中病院へのマッチが約58.6%と大学病院を大きく上回っております。

マッチング制度以前に比べ選択肢が増えたため、卒後はマッチさえすればある程度自由に研修先を選べるようになった反面、どこで研修すべきか迷われている学生さんも多数いらっしゃる印象があります。特に大学病院で研修すべきか市中病院で研修すべきかは大きな選択の一つでしょう。

それではそれぞれの病院の特徴をメリット・デメリットをおさえ検証していきましょう。

大学病院の特徴

ポリクリ(臨床実習)で実際に研修医の先生と関わることもあると思いますので研修のイメージは付きやすいのではないでしょうか。

以下にメリット・デメリットをまとめてみました。

  • メリット 
    • 同期の数が一般的な市中病院に比べて多い
    • ほぼ全ての科が揃っている
    • 最新の医療・特殊な疾患に触れることができる
    • カンファレンスでの発表能力が鍛えられる
  • デメリット
    •  一般的に市中病院より待遇は悪い
    • 改善されつつあるが、市中病院ではコメディカルが行う仕事が研修いの仕事となることがある(採血、輸液ラインの確保、患者の移動介助など)
    • 手技を行う機会や外来で患者にファーストタッチする機会が少ない
    • 科によってはポリクリの延長の見学中心お研修となることがある

大学の付属病院という特色とスケールを活かしたメリットが主にありますが、待遇面・仕事内容では市中病院に比べると物足りなく感じるかも知れません。

さらに大学病院といっても下記のように細かく分類することができます。

  • 歴史の古い国立大学病院(例:旧帝国大学の付属病院など) 
  • 歴史の浅いの国立大学病院(例:政令都市外に立地する国立大学の付属病院など)
  • 歴史の古い私立大学病院(例:私立医大旧御三家の付属病院など)
  • 歴史の浅い私立大学病院

一般的に歴史の古い大学の病院ほど国立および私立を問わず、のちの大学医局への入局(就職)を見越した人脈作り目的に、他大学出身の研修医の数は多くなります。

また、歴史の浅い大学は国立および私立を問わず、自大学出身者の研修医の数が多くなる傾向があります。

なお、私立大学の一部では学閥意識がそこまで強くないことから、特に都内に立地する大学病院において地方国立大学出身者に人気があったりします。

主に初期研修後のキャリアをアカデミックな大学の医局で積みたい先生に向いています。それぞれの特徴も踏まえてどの大学病院での研修が自分に向いているか検討してみるのが良いでしょう。

マッチング以前から研修医を受け入れていた市中病院の特徴

このグループに属する病院は基本的に研修医の教育に長い歴史を持っており、満足できる研修が送れる可能性が高いでしょう。

  • メリット
    • モチベーションが高い同期が多い
    • 長年にわたり教育体制が確立されている
    • 続けて後期研修を行う際に有利
  • デメリット
    • 人気が高くマッチするためのハードルが非常に高い
    • ブランド病院も含まれており、研修医が実戦的なことを行う機会が限られることもある

以上を考えると、倍率の高さを乗り越えマッチすることができれば非常に満足度の高い研修を受けられる可能性が高いでしょう。なお、成績優秀な学生さんがマッチする頻度も高く、マッチすれば一目置かれることは間違いありません。

マッチング以降に研修医を受け入れ始めた市中病院の特徴

大多数の市中病院がこのグループに属しますが、研修体制は非常に玉石混合となります。制度が変わってしばらくはこれら多くの病院が、研修体制の整備に試行錯誤していました。それから長い年月が経ち、病院間で研修のレベルに差が出ている印象があります。さらに細分化して検証してみましょう。

大学とのつながりが大きい市中病院

いわゆる大学の関連病院にあたり、「○大学のジッツ」などと呼ばれたりします。自分の所属する大学の関連病院であれば、直接見学を申し込まなくてもポリクリの一環で実習に出向くこともあります。

  • メリット
    • 大学病院に比べ待遇が良いことが多い
    • 大学病院に比べ手技など実戦経験を積む機会が多い
    • 入局を検討する際の人脈作りができる
  • デメリット
    • 大学病院で1年間、市中病院で1年間といったたすき掛けプログラムを採用している病院が多く、その病院に慣れたところで異動となることがある
    • 学閥意識が強い傾向があり、特に科ごとに学閥が違うとその傾向は顕著になる

初期研修後のキャリアは大学医局で積みたいけれど、研修中は実践的なことも行いたい先生に向いているのではないでしょうか。

大学とのつながりが小さいもしくはない市中病院

  • メリット
    • 待遇が良いことが多い
    • 手技などたくさん実戦経験を積む機会が多い
    • 基本的に学閥に関係なく働ける
  • デメリット
    • 最初から即戦力として扱われることが多い(メリットとも言えるが、ある程度の対応力がないと研修に付いていけなくなる)
    • 研修体制の当たり外れが大きい
    • 初期研修終了後に入局する際は一から人脈作りが必要な場合もある

自由な雰囲気で研修したい、もしくは初期研修後の進路も自分で自由に選びたい方は、大学とのつながりが小さな病院を選ぶ方がしがらみが少なくて良いでしょう。

マッチング以降に研修医を受け入れ始めた研修病院の総評

以上の病院には有名研修病院以外が多く含まれるため、当たり外れは多いと考えられます。これらの病院をマッチングに検討する際は、必ず十分に見学を行うことをお勧めします。

また、当初は初期研修後の大学医局への入局は考えておらず大学との繋がりが小さい病院で研修していた先生が、研修中に気が変わり研修終了後に大学医局に所属することとなっても、特にキャリア面で大きな問題はないと思います。

むしろ研修中にどれだけ診断能力等を含め、研修中に身につけるべき能力を高めることができるかの方が重要です。

まとめ

いかがでしょうか?研修指定病院を分類するだけでも多岐にわたりますが、簡潔にまとめると以下の通りです。

  • 大学病院は早くからアカデミックなキャリアに触れたい先生向き
  • 市中病院は早くより実践的なキャリアを積みたい先生向き

大学病院と市中病院のどちらで初期研修を行った方が良いかは、将来のキャリアプランによって大きく左右されるため一概に決められるものではないとも言えます。

私自身は、大学5年生から6年生の夏までの間におよそ10以上の病院を見学し、試行錯誤の上に研修先を決めました。

では次回の記事では研修病院を選択する際にどこを重要視すべきか検証していきましょう。

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