外科医の働く診療科によって忙しさは違うのか?

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前回の記事では仕事内容の点から、実際に外科医がどのように忙しいのかどうかを検証していきました。

外科医は小説やドラマ、映画などの主人公にしばしば取り上げられます。 近年放映されている医療系ドラマでも、「ドクターX」、「医龍」、「ド...

一言で外科医と言っても現在は診療科としては細分化されているので、手術を中心とした外科的治療の比重がどの程度のものかは診療科によって大きく異なります。

今回は外科が勤務する科としてどのような診療科が挙げられるのかを見ていき、診療科の特性によってどの程度外科医の忙しさを左右するのか検証しましょう。

外科医の定義

先ずは、そもそも外科医とはどう定義されているのでしょうか?ある医師の勤務する診療科の名称に~外科と付いていれば誰でもすぐに外科医だと判断できると思います。

実際に私たち医療従事者も、外科医と言われると一般外科、消化器外科、心臓血管外科等ので働く医師をイメージします。

しかし、実際の医療現場では~外科という名称ではなくても外科的処置や手術を行う診療科は存在します。

正確な定義は曖昧ですが、外科医を定義すると狭義から広義で以下のようになります。

  • 最も狭義の外科医→一般・消化器外科の医師
  • 一般的な認識の外科医→~外科と付く診療科で勤務する医師
  • 最も広義の外科医→外科的処置や手術を行う医師

最も狭い意味での外科医の定義は、一般外科および消化器外科で勤務する医師となります。

なぜなら多くの病院で一般外科および消化器外科は、まとめて単に「外科」とだけ標榜されており、病院内で「外科の先生」と言うと一般・消化器外科の医師を意味することが多いからです。

なお、広い意味での外科医の定義は診療科の名称に~外科と付かなくても外科的処置や手術を行う医師としておりますが、あまり一般的な定義ではありません。

だだし、多くの科の比較が出来るよう本記事では広義の「外科的な処置や手術を行う医師」で外科医を分類していきたいと思います。

外科医が勤務する診療

外科医が勤務する診療科を分類していくと、手術を中心とした外科的治療の比重によって以下のようにカテゴライズされます。

  • 対応する内科が存在し外科的治療の比重が大きい科
    • 一般外科  
    • 消化器外科
    • 呼吸器外科
    • 心臓血管外科
    • 脳神経外科
    • 小児外科
  • 対応する内科は存在せず内科的治療・外科的治療をどちらもこなす科
    • 眼科
    • 耳鼻咽喉科
    • 皮膚科
    • 泌尿器科
    • 産婦人科
  • 対応する内科は存在せず外科的治療の比重が大きい科
    • 整形外科
    • 形成外科
    • 美容外科
    • 乳腺外科

それではそれぞれのカテゴリーについてさらに細かくみていきましょう。

対応する内科が存在し外科的治療の比重が高い科

これらの科は同じ臓器を扱う内科が存在しますので、より外科的治療のウエイトが高くなります。

例を挙げますと、消化器外科には対応する消化器内科が存在し、手術が必要な消化器疾患は外科が対応し、投薬治療などで治療する消化器疾患は内科が対応します。

同様に、心臓血管外科は心臓や血管の手術に特化しており、心臓のカテーテル治療や投薬治療は対応する循環器内科が対応します。

ただし、外科と内科でも病院によっては扱う検査、治療や疾患がオーバーラップすることもあります。

腸閉塞を例に出すと、緊急手術が必要や場合は外科で治療しますが、そうでない場合は外科でみることもあれば内科でみることもあります。

また、通常胃カメラや大腸カメラは消化器内科医の守備範囲ですが、消化器外科医が行なっている病院も数多く存在します。

いずれにせよ、手術を中心とした外科的治療が仕事の中心になります。

対応する内科は存在せず内科的治療・外科的治療をどちらもこなす科

このカテゴリーでは、各臓器に特化したマイナー科と呼ばれる科が中心になります。

眼や皮膚など、狭く深い領域に特化しており、一つの科で内科的治療と外科的治療を行なっております。

皮膚科を例に挙げると、アトピー性皮膚炎の投薬治療という内科的な治療もこなせば皮膚癌の摘出や植皮といった手術もこなします。

対応する内科は存在しないが外科的治療の比重が大きい科

整形外科や形成外科などは外科と付くだけあって、手術を中心とした外科的治療に特化していますが、消化器外科や心臓外科と違って対応する内科は存在しません。

これは、このカテゴリーに入る科が扱う臓器に内科的治療を要する疾患よりも外科的治療を要する疾患が多いからとも言えます。

例えば整形外科が主に扱う骨は、骨折といった外科的治療を要する疾患が中心となります。

ただしこれらの科でも全く内科的な治療をしないわけではなく、整形外科医が関節リウマチや骨粗鬆症の投薬治療を行うこともあれば、乳腺外科医は乳癌に対してホルモン療法や化学療法も行います。

外科医が勤務する診療科のまとめ

以上のように外科医も勤務する診療科によって外科的治療の比重は大きく変わってきます。上記の分類を簡単にまとめてみましょう。

  • 対応する内科が存在し外科的治療の比重が大きい科
    • 手術や外科的処置が仕事の中心であり緊急手術・処置などもありうる
    • 同じ疾患でも手術が不要であれば対応する内科が治療してくれることもある
  • 対応する内科は存在せず内科的治療・外科的治療をどちらもこなす科
    • 規模の大きい病院では外科的治療や入院治療の比重が高くなる
    • 規模の小さい病院では外来・内科的治療が中心となる
  • 対応する内科は存在せず外科的治療の比重が大きい科
    • 手術や外科的処置が仕事の中心だが整形外科を除いて緊急手術・処置は少ない
    • 整形外科・乳腺外科は内科的治療も行う

対応する内科が存在し外科的治療の比重が大きい科では緊急での治療が必要な臓器を扱っているため、日中および夜間に緊急手術や処置を行うことがあるので忙しくなりやすい傾向があります。

しかし、緊急治療を要する疾患でも外科的治療が必要でなければ対応する内科が治療してくれることになります。

対応する内科は存在せず内科的治療・外科的治療をどちらもこなす科では、病院の規模によって内科的治療と外科的治療の比率は変わってきます。

大学病院や医師数の多い大規模病院では手術の比率は高くなり、小規模な病院やクリニックでは内科的治療の比率が高くなる傾向があります。

それでは外科的治療の大規模な病院の方が忙しくなるかというと、小規模な病院ではその科の医師数が少なくなる傾向があり少人数で治療にあたるため逆に忙しくなることもあり得ます。

対応する内科は存在せず外科的治療の比重が大きい科では、手術や外科的処置が仕事の中心となりますが緊急手術はほとんどありません。よって日中の勤務時間は忙しくても、帰宅後は緊急で呼び出される頻度が非常に低く、オンオフがはっきりしているとも言えます。

ただし整形外科だけは骨折や事故など夜間も救急対応している病院では、同じカテゴリーの他の科と違い緊急手術や処置の頻度はかなり高くなります。

以上、外科医の勤務する診療科の特性によって仕事内容は大きく変わることがわかりました。日中の仕事だけでなく、緊急疾患の対応がどれだけ多いかによっても仕事の忙しさは変わって来ます。

次回以降の記事では外科医が対応する具体的な緊急疾患なども検証していきたいと思います。

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