初期研修を行う病院を選ぶ際に何を重視すべきか?

初期研修をどこで行うべきか迷っている医学生の皆さん、前回の記事、では大学病院と市中病院のメリット・デメリットを比較し検証してみました。

医学部卒業後は臨床医を目指して2年間の初期臨床研修(初期研修)を受ける方が大半だと思います。 2004年から医師臨床研修マッチ...

ある程度は漠然と研修は大学病院で行おう、もしくは市中病院で行おうと考えていても、どのような点を重視して研修すべき病院の候補を絞れば良いのでしょうか?ここで比較基準を3点設けて研修病院を絞ってみましょう。

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3点の比較基準を設ける

初期研修に何を期待するか、何科に進むかによって比較基準は様々だと思います。

私の場合はある程度早い段階で市中病院で研修することを決めていましたが、最終的に以下の3点でそれぞれの病院を比較し絞り込みました。

  • 研修内容
  • 立地
  • 給料

ざっくりしていると思われるかもしれませんが、シンプルに考えた方が候補に上がった病院の比較は楽になります。

ではそれぞれの選択基準について検証していきたいと思います。

研修内容による比較

結論からいうと実際の研修内容は同じ病院の科によっても違うので、実際に働くまではわかりません。しかしそれでは話が終わってしまいますので、大まかに志望する科別に研修内容について重視すべき点をまとめてみました。

内科系志望の場合

内科に進んだ同級生や知り合いに沢山いますが、現在活躍している内科の先生は研修内容に以下の点を重視していました。

  • 特殊な疾患よりよく見る疾患(common disease)を豊富に担当できるか
  • 院内の症例検討会や研修医の勉強会が充実しているか

大学病院のポリクリ(臨床実習)では特殊な疾患を見る頻度が高いです。しかし多くの医師が生涯経験するのはcommon diseaseの割合が多いはずです。

そう考えると、早いうちからcommon diseaseを豊富に経験できる市中病院の方に軍杯が上がりそうですが、一方で早くから症例検討会でしっかりとディスカッションを行い知識の体系化を進めることも重要です。

もちろん市中病院でも、研修医を交えて症例検討やディスカンションが活発に行われる病院も有名研修病院を中心に存在しますが、研究機関でもある大学病院での症例検討の質は高く、早くから参加して慣れることも大切かもしれません。

解決策として、2年間の初期研修のうち大学病院と市中病院を1年ずつ研修するたすき掛けプログラムに参加する、もしくは両方の要素を良さを兼ね備えたいわゆる有名研修病院を検討するのが良いでしょう。

外科系志望の場合

私は外科医ですので、自分自身の経験から自信を持って研修内容の何を重視すべきか述べることができます。

外科志望でしたら研修医の間に実戦的なことをバリバリやらせてもらえる病院から選ぶべきです。理由は以下の二つです。

  • 手術の見学だけしても実際に手を動かさないと難しさがわからない
  • 実際に手術に参加しないと手術の楽しさを知る前にモチベーションが下がってしまう

もちろん、手術以外の術前・術後管理や合併症の対応も時には手術以上に大切です。しかし初期研修中はまず外科の楽しさを知ることから始めてはいかがでしょうか?

以上を重視すると、必然的に大学病院や研修医の数の多い都心の病院より、地方都市や僻地の病院に軍杯が上がります。

しかし研修医にどこまでさせるかは病院によってかなり温度差が大きいので注意が必要です。私は実際に初期研修の間に執刀の機会はあるのか見学先の先生に確認していました。

内科・外科以外の科を志望の場合

内科・外科以外の科、特に眼科や皮膚科、耳鼻科といったいわゆるマイナー科は初期研修を終了したのちに各専門医取得を目指すにあたって、厳しい条件が課される場合があります。

例えば、大学病院でしか見られないような特殊な疾患を経験する必要があったり、そもそも専門医を取得するためにその対象となる学会に入会する際(例えば眼科専門医を取得するならば日本眼科学会に属する必要がある)、大学医局に属して教授からの推薦を貰わなければいけないケースなどが挙げられます。

このような科を志望したうえで研修病院を選択する際は、初期研修後に最短で専門医を取得することを考えると以下のようなコースがお勧めです。

  • たすき掛けプログラムを利用し、1年目は市中病院で診療の基礎を学び2年目の大学病院で志望科を最大限ローテートし、特殊な疾患等を学ぶ(できたらその時点で学会に推薦してもらう)
  • そもそも2年間の研修を大学病院で行い、自由選択期間を利用して最大限自分の志望する科を選択する(もちろん学会への入会も早めに行う)

一般的に、市中病院ではマイナー科の診療体制は大学病院に比べてスタッフも少なく研修するには物足りない場合が多いですので上記のようなコースをお勧めしましたが、病院によっては大学病院に負けるとも劣らない診療体制を備えたマイナー科を擁する病院もあります。

自分自身の志望する科の、専門医取得までどのようなキャリアが必要かを事前にしっかりとリサーチした上で、検討する病院の研修内容と照らし合わせてみると良いでしょう。

志望が決まっていない場合

現在、私が勤務する病院にも5年(回)生の学生さんが実習に来ますが、意外とその時点では志望科が決まっていないケースが多く見られます。

その中には卒業時点でも志望科が決まらず、研修先の病院で色々な科を見てから決めようという学生さんも多いでしょう。

私の経験から、将来何科に進むにせよ研修医時代に身に付けるべき基本的な能力として以下のことが挙げられると考えております。

  • 初期症状からよくある(頻度の高い)疾患を鑑別する能力
  • 鑑別した疾患を絞り込むために行うべき検査を選択する能力
  • よくある疾患に対して適切な初期対応を行う能力
  • 絞り込んだ疾患の専門性が高い際に適切な科にコンサルとする能力

研修医が終わり専門の科に進んだ際、基本的にはその科で診療すべき疾患を持った患者を担当することになります。しかし中には入院中に自分の科と関係のない疾患を発症することがあります。(例えば統合失調症で精神科に入院していた患者が腸閉塞を発症する、外科で胆嚢摘出を行なった患者が脳梗塞を発症する、など)

ここで適切な対応を行わなければ、治療が後手に回ってしまうことや最悪訴訟のリスクにもなりかねません。ですので、まだ志望が決まっていない場合は上記に挙げた能力がしっかりと身につけられることを優先的に考えてみてはいかがでしょうか?

以上のことを考えて、以下のような研修が充実している病院がお勧めです。

  • 救急外来(できればER型救急)に救急専門医が常駐し、研修医を指導してくれる
  • 総合診療科のスタッフが充実しており、初診の患者窓口としてしっかりと機能している

ER型救急を行なっている病院は地域により偏りがありますが、まさに症状から疾患を診断し必要な場合は専門家にコンサルトを行うというプロセスは、何科に進んでも役立ちます。

また、総合診療科が科としてしっかりと機能している病院は研修医の診断能力育成にも通常力を入れており、上記の能力が身につくことは間違いありません。

以上のことをおさえておけば、例え志望する科が決まっていなくとも病院を絞り込めむことができると思います。

因みに私自身はER型救急の病院で研修を行い、救急での3ヶ月間の研修に加えて当直時の救急対応でも救急医の先生からみっちりと指導していただきました。そこで経験した多数の症例のおかげで、外科医になってからも救われる場面が多数ありました。

研修内容のまとめ

志望の科別に重要視すべき点を並べていきましたが、研修医のうちに身につけることで最も大事なのは、やはり症状から疾患を鑑別する能力、そして専門家の助けを得るまでの初期対応ができる能力です。

一見難しそうに思えますが、しかるべきジェネラリストの指導医に学ぶことができ症例さえ揃っている病院であれば研修医が終わる頃にはしっかりと身につくはずです。

もし研修内容を比較してどっちつかずになりそうだったらこのことを思い出して下さい。

立地による比較

立地を最重要視する医学生さんも多いのではないでしょうか?

大きく分けて都市部と地方の病院では以下のようなメリット・デメリットが考えられます。なお、ここでいう都市部とは、政令指定都市クラスの都市を想定しておきます。

都市部の病院

都市部ではその人口の規模から研修病院の選択肢が多数あるのが特徴です。

以下にメリット・デメリットをまとめてみました。

  • メリット
    • 病院あたりの研修医の数が多く、自分自身の到達度が相対的に評価できる
    • 有名な医師が在籍し、最先端の医療が行われている病院も多い
    • 都市部は研究会等多く開かれ参加しやすく、娯楽も多い
  • デメリット
    • 病院あたりの研修医の数が多く、症例の取り合いが生じることがある
    • 都市部では自己主張の強い権利意識の高い患者(政治家、経営者、弁護士等)が多い地域、逆に柄の悪い患者の多い地域が存在する
    • 一般的に給与や家賃補助といった待遇が地方の病院に比べて悪くなる傾向がある

研修医の同期が多いと、研修医としての自分の到達度が評価しやすく、また一人で悩まずに済む反面、同じ科を志望している場合などに良くも悪くもライバルが増えることにもなります。

また、都市部では同じ都市でも地区や病院によって患者層が大きく変わることがあり、場合によっては診療以外のことで気を遣ってしまうこともあるのでしっかりと患者層をリサーチしておくことも重要です。

基本的に都心や都市部の大学の学生さんはそのまま都市部の病院での病院を希望する印象が強く、地方で学生生活をされている学生さんも卒業後は都市部への進出を希望されす場合も多いため、マッチングの倍率も高くなる傾向が強いです。

地方の病院

一言で地方の病院といってもその幅はかなり広いのですが、ここでは共通する傾向を分析して見たいと思います。それではメリット・デメリットをまとめてみましょう。

  • メリット
    • 病院あたりの研修医が少なく、手技や症例が沢山回ってくるチャンスが多い
    • いわゆるクレーマー患者が少なく研修医でも診察がしやすい
    • 一般的に待遇が都市部の病院に比べて良くなる傾向がある
  • デメリット
    • 病院あたりの研修医の数が少なく、自分自身の到達度が測りにくいことがある
    • 医師数が少ない病院が多く、指導医のレベルにばらつきが生じることが多い
    • 近場で開かれる研究会の頻度が都市部に比べて低く、娯楽も少ない

地方に行けば行くほど、研修医であっても「お医者さま」という扱いをしてくれる患者が多く、診療に対するストレスが少なくなります。また、娯楽が少ないといえど安価で美味しい料理が食べられたり、お金を使う機会が少ない上に給料が良いことが多いため今後に備えてしっかりと貯蓄することができます。

外科系志望で主技などを積極的に行いたい場合は地方の病院から詮索するのをお勧めしますが、病院全体の医師数も都市部に比べて少ないことが多いため、忙しすぎないか(研修医が過剰に患者を担当させられないか)など注意が必要です。

立地のまとめ

基本的にメリット・デメリットは都市部の病院と地方の病院でトレードオフの関係になります。そして都会であればあるほど、地方であればあるほど上記の傾向は強く反映されます。しかし以下のような例外もありますので注意が必要です。

  • 地方の病院であっても人気の高い研修病院は都市部の病院に特徴が近くなる傾向がある
  • 都市部の病院であっても人気の低い研修病院は地方の病院に特徴が近くなる傾向がある
  • 大学病院では都市部と地方とで特徴があまり変わらないことが多い

総合的にみてやはり都市部を希望するケースが多いでしょう。

因みに私自身は人口数万人規模の、周囲の自治体含めて総合病院がその研修病院しかないような環境で研修しました。周りに娯楽は少ないとはいえ、研修医時代は新しいことを吸収すること自体が楽しく、都市部で研修を行なっていた同級生に比べて外科手術の執刀も含め多数の実戦的な経験を積むことができ、あっという間に過ぎた2年間でした。

給料による比較

日本人的には給料の話をするのはタブーだと考える人が多いと思います。特に面接の際に待遇面を直接聞くのはタブーであるかのような空気も見受けられます。

しかし、給料は仕事のモチベーションに繋がるのも事実です。どんなに研修で苦しい局面が訪れても、これだけもらっているんだから、と乗り越えられることもあります。

また、独身の医師においては初期研修の間は貯蓄できる絶好のチャンスです。早い段階から貯蓄や資産形成を行うことで、次のステージに進む際に選択肢が広がります。

ぜひ検討している病院の待遇がどれくらいになるのか(基本給だけでなく時間外手当なども)はっきりしなければ、見学時にでも事務の担当者にはっきりと聞くようにしましょう。

まとめ

初期研修をするなら大学病院が良いか、それとも市中病院が良いか、2回の記事に渡って検証してみました。大学病院で研修しよう、もしくは市中病院で研修しようと決めた際には、以下のことを踏まえ病院を絞っていきましょう。

  • 研修内容は自分の進路に合っているか
  • 2年間充実して過ごすことができそうな立地か
  • 給料は自分のモチベーションを保てるぐらいは確保されているか

なお研修先病院の研修体制の良し悪し以上に忘れて行けないことは、研修を受ける本人の姿勢によって初期研修は実りの多いものになるか否か決まるということです。

仮に手技等実戦的なことを経験する機会が少なくてもしっかりとその手技や診療行為の意味を考えながら見学すれば、自分のターンが回った時の伸びは目を見張るものがあります。

大局的な目を持って今回の記事を研修病院選択の参考にしていただければと思います。

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