都市部出身者の視点から医療過疎地での初期研修のメリットを考える

プロフィール欄にも簡単に記載しておりますが、私は人口数万人程度の地域にある唯一の総合病院で初期研修(初期臨床研修)を行いました。

当サイトでは現役の外科専門医の立場から、医療全般に関する疑問や問題に答えていきますが、ここでは私が外科医を志してから現在に至るまでの経緯を簡...

いわゆる医療過疎地と呼ばれる地域に当たり色々と不便な面も多いですが、都市部にはない魅力も沢山ありました。

一部以前の記事で言及していた点もありますが、今回はこのような地域で初期研修を行うメリットとデメリットを私自身の詳しいエピソードも交えて検証していきましょう。

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私が医療過疎地で初期臨床研修を行ったきっかけ

私自身は人口規模も大きい政令指定都市で生まれ育ち、そのまま地元の総合大学の医学部を卒業しました。

もともと地元が好きでしたので、当初は卒業してもそのまま地元の病院で外科医をできればと考えておりました。

しかし、大学4年生時に外科の授業の際に来られた外部の講師(市中病院の外科部長)から、「初期臨床研修は全国津々浦々自分で選択することが出来るので、どうせなら医師不足で研修医でも重宝されて、実戦経験もたくさん積める医療過疎地で研修した方がいい。」と言われ考えが変わりました。

都市部以外に住んだこと自体ありませんでしたので、医療過疎地での生活は想像できませんでしたが、もともと外科志望なので早いこと実戦経験を積みたいし、初期臨床研修の2年間限定ならなんとかなるかな、と思い研修先を探すようになりました。

それでは私自身の体験を踏まえ、医療過疎地での研修のメリットとデメリットを挙げていきたいと思います。

医療過疎地での研修のメリット

私が医療過疎地での研修を希望したのは、もちろんデメリットを上回るメリットがあると感じたからでした。

当初は、実戦的な経験が積めるうえに食事も美味しそうだし、都会の病院に比べると給与水準も高いだろう、といったイメージでしたが、実際下記のようなメリットがありました。

  • 医師が少ないため院内で大事にされる
  • 実戦力が求められるため手技などが行いたいだけ出来る
  • 症例が他の病院に分散されず様々な症例を経験できる
  • 反社会的組織等がなく善良な患者さんが多い
  • 給与水準が高く物価は安い

それではひとつひとつのメリットについて、私自身のエピソードを交えて振り返ってみたいと思います。

医師数が少ないためのメリット

私が初期研修を行った病院は、現在私が勤める都市部の病院と比べてベッド数は2倍以上ありましたが医師数は半分以下でした。

初期研修医と言えども病院の戦力となる医師の医師の一人として見なされるため、指導医のみならず病院職員からも大事にしてもらえる傾向がありました。

因みに私が学生時代に実習を行った大学病院は、多数の医師に加えて100人以上の初期研修医がおり、指導医や他のコメディカルにややぞんざいに扱われている(ように見える)シーンも見受けられました。

しかし、研修医の間はそのような扱いを受けることなく非常に気持ちよく勤務することが出来ました。

手技などが行いたいだけ出来るメリット

あえて医療過疎地での研修を希望する医学生さんの中には、手術やトロッカー挿入、CVカテーテル留置などといった手技を沢山経験して身に付けたいという方も多いと思います。

実際、私自身も研修中は多数の手技を経験することが出来ました。

初期研修1年目の4月も終わる頃には救急外来でCVカテーテルを挿入していましたし、6月頃には手術の執刀も経験しました。

もっもと「手技なんて臨床医をやっていればいつかは身につく」という意見もありますが、早い段階で様々な手技を経験しておくことで、より手技が上手な指導医が行なっているのを見学する際の見る目も変わってきますし、出来る医療行為が増えることで周りからの信頼を得てさらに進んだことも経験していくことが出来ます。

早い段階から多くの手技や手術を経験することで、多くのチャンスを得ることができた私からすると、最も大きなメリットの一つだと考えています。

様々な症例を経験できるメリット

都市部では複数の病院に症例が分散してしまいますが、医療過疎地では基幹となる病院が場合によっては一つしかないため、様々な疾患が集まってきます。

私の研修したのは人口3万人ちょっとの都市唯一の総合病院で、周辺の町まで含めるとバックグラウンドの人口は7万人程でした。

救急外来は基本的に救急医の先生が対応するER型の救急で、外傷などにも対応する3次救急を標榜していました。

近隣に他の病院がないため、外傷から感冒まで様々な疾患の患者さんが来院してくるため、救急の教科書に載っている疾患はほとんど経験することが出来ました。

急性喉頭蓋炎やアナフィラキシーショック、精巣捻転に骨盤骨折、1日に5例くらい立て続けに脳出血を診断したこともありました。

外科医になった今となっては診断することもない疾患もありますが、バリエーション豊かな症例を経験したことは自分の担当患者さんに異変が起きた時に鑑別疾患を浮かべる際に大変役立っています。

患者さんの層が良いメリット

都市部では柄の良い地域の病院、悪い地域の病院によって患者さんの層が大きく異なり、場合によっては診察する上でストレスを感じることもあり得ます。

医療過疎地の病院も都市部の病院も経験した今となって振り返ると、私の研修していた病院に集まってくる患者さんは診察する上で大変協力的でした。

理由としては恐らく、都会と違って時間の流れがゆったりしているのでぎすぎすしている人が少なく、未だに「お医者さま」という扱いで接してくれる患者さんが多かったように思えます。

もちろんそれに甘えて尊大な態度になってしまってはいけませんが、研修医でも一人前の医師としてみられる、と思うとこちらもそれに応えられるように頑張ろうという気になります。

医師のスタートを切るうえで、この環境は大変良かったと思います。逆だったら初期研修の時点で臨床が嫌になってしまう人が出るかも知れません。

給与水準が高く物価は安いメリット

2004年に初期臨床研修の制度が変わって以来、研修医の給与は一定額が保証されるようになりました。

それ以前は研修医の月収は数万円程度、臨床のイロハもわからない研修医の時点で救急外来などのアルバイトをしなければ生活もままならなかったと聞きます。

基本的に研修医の給与は医療過疎地ほど高く都市部程安くなる傾向があります。

なお、家賃や物価は医療過疎地程安く都市部程高くなりますので、必然的に医療過疎地で研修をすればその2年間の間だけでも大きな蓄えをすることが出来ます。

もちろん給与の高さだけで研修病院を選ぶのは適切ではないと思いますが、今後のライフスタイルの変化などで資金が必要になる可能性があれば、給与の高さはプラスアルファのメリットになります。

医療過疎地での初期研修のメリットのまとめ

以上、私の経験も交えて医療過疎地での初期研修のメリットを挙げていきました。

それでは簡単にまとめてみましょう。

  • 院内で大事にされる→一人の医師として見られているという意識を持って研修できる
  • 手技が沢山経験できる→出来る医療行為が加速度的に増える
  • 様々な症例が経験できる→鑑別疾患の引き出しが増え対応もできる
  • 患者さんの層が良い→嫌な思いをせず診療に集中できる
  • 給与が高く物価が安い→研修医の間に沢山貯蓄できる

敬遠されそうな医療過疎地で研修する魅力をわかって頂けたでしょうか?上記に挙げた以外のメリットも医療過疎地の病院にはまだまだ沢山あります。

次回の記事では逆に、医療過疎地での初期研修のデメリットを私の経験からお話ししたいと思います。

前回の記事では、医療過疎地の病院で初期研修を行うことのメリットを私自身の経験も踏まえてお伝えいたしました。 しかしメリットがあれば...
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