現役の外科医が「ドクターX 第6シリーズ 第4話 」のあらすじを解説!

引用元:https://www.tv-asahi.co.jp/doctor-x/

2019年11月7日21時より、「ドクターX 第6シリーズ 第4話」が放送されました。

今回は膝関節のがんである、滑膜肉腫の治療と、認知症がテーマとなっておりました。

その中に、本第6シリーズを通してのテーマである、AI対人間の構図も見受けられました。

前回同様、専門領域ではない分、若干考察が浅くなってしまいますが、今回の話の背景やドラマの提唱するメッセージを含めて、現役の外科医の視点から解説していきたいと思います。

なお、前回の記事はこちらになります。

引用元: 2019年10月31日21時より、「ドクターX 第6シリーズ 第3話」が放送されました。 今回は舌に発生する舌癌(ぜつがん...
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「ドクターX 第6シリーズ 第4話」のあらすじ

日本陸上界のエース・四日市選手が、右膝の痛みを訴え東帝大学病院に入院します。

検査の末、右膝関節に滑膜肉腫というがん(悪性腫瘍)が出来ており、右膝関節の広範切除術が必要との判断になりました。

次世代インテリジェンス外科手術担当外科部長・潮が四日市選手に治療方針を伝えましたが、その術式で手術を行うと元のように走れなくなっていまい、選手生命は絶たれてしまうため本人は治療を拒否します。

そんな中、潮の母が息子を訪ねて病院にやってきます。

物忘れが激しく、認知症を疑う症状をきたしていたため検査を行ったところ、医療用AI(人工知能)から高い確率でアルツハイマー型認知症の診断を下されました。

息子の潮は母に、内服薬で病気の進行を遅らせる治療を提案します。

しかしフリーランス外科医・大門未知子は、ちょっとした違和感から潮の母は別の病気だと診断し、適切に手術を行い治療しました。

AIの診断を信じて自分の母に対して間違った治療を行おうとした潮は、大門から「AIばかり見ているから治せるものも治せない、もっと自分の頭で考えたら」と言われてしまいます。

その言葉に反省し、四日市選手の治療方針を自分の頭で考え直し、なんとか彼の命と選手生命の両方を救う手術を考案しました。

最終的に大門に助けられながらも、四日市選手の手術は成功します。

以上簡単にあらすじを紹介しました。今回もAI対人間の構図が見られ、改めて患者と向き合い自らの頭で考えることの大切さも考えさせられましたました。

「ドクターX 第6シリーズ 第4話」で取り上げられた疾患

今回も以下に示すよう専門的なかつ様々な疾患が取り上げられました。

  • 滑膜肉腫
  • アルツハイマー型認知症
  • 特発性正常圧水頭症

それでは、それぞれ簡単に解説していきます。

滑膜肉腫

「滑膜肉腫」は、30歳前後の成人に発生する、比較的稀な軟部肉腫(筋肉や脂肪などの組織にできる悪性腫瘍)の一つです。

手足の関節が好発部位(よくできる場所)であることから、ドラマの中では日本陸上界のエース・四日市選手の右膝関節に出来た設定となっていました。

治療としては、ドラマの中でも提示された外科的な「広範切除(腫瘍ができた部位を一部正常な組織も含めて広く切除すること)」が原則となっています。

そのため、手術を受けると元の関節の機能が大きく損なわれてしまい、アスリート生命を絶たれてしまうことに四日市は絶望していました。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、脳にタンパク質が異常に沈着することによって脳の萎縮が進み、記憶の障害を始めとした様々な症状が出現し、最後は日常生活を送ることも困難になってしまいます。

高齢者の認知症を来す病気は様々あるものの、このアルツハイマー型認知症がその過半数を占めることから、AIが85%という高い確率でこの診断を下したのも納得ですね。

現在のところアルツハイマー型認知症を治癒することは困難で、ドラマ同様症状の進行を遅らせる治療が中心となります。

特発性正常圧水頭症

特発性正常圧水頭症は高齢者にみられる病気で、特に明らかな原因がないにも関わらず、突発的に脳脊髄液の流れが障害を受ける病気です。

歩行の障害が最も特徴的で、さらに認知症や尿の失禁が主な症状となります。

治療の基本は作中と同じく、髄液を頭からお腹の中に逃してあげる経路を造るシャント手術になります。

逆説的ですが、シャント術を行った後に劇的に症状が改善すれば特発性正常圧水頭症の診断が確定します。

大門は注意深く潮の母の行動を観察する事で、AIによってなされていた診断を覆したのでした。

「ドクターX 第6シリーズ 第4話」を見て興味深かったシーン

さて、ここからは現役の外科医である私から見て興味深かったシーンを解説していきましょう。

私は以下のシーンで特に興味を惹かれました。

  • アスリート生命が終わることは死ぬことと同じだと四日市が言ったシーン
  • 潮の母親の手術を潮の同意なしに行ったシーン
  • AIにばかりに頼らず自分の頭で考えるよう大門が潮に言ったシーン

それでは順に解説して行きましょう。

アスリート生命が終わることは死ぬことと同じだと四日市が言ったシーン

四日市は手術で膝関節のがん(悪性腫瘍)を摘出することによって、元のように走ることが叶わず、選手生命が断たれてしまうことに絶望します。

ここでがんの手術は基本的にがんの出来た部位を摘出することが基本です。

したがってその切除した部位の機能は失われてしまうことになります。

今回の場合ですと、がんと共に膝関節を摘出して人工関節(金属やで出来た人工の関節)代用しようという計画でした。

しかしどんなに人工関節の技術が発達しても、なかなか元のように走るというのは困難です。

以上のようにがんの手術は「元からある機能を犠牲にしてがんの根治(完全な治癒)を目指す」という側面があり、その「元からある機能」が本人にとって自分の生命よりも大事な場合は、治療の方針にどう折り合いをつけていくかが求められます。

実際、外科医としてもがんの治癒は得られたのに手術の影響で手術前と同様の生活を送れなくなると複雑な気持ちになります。

潮の母親の手術を潮の同意なしに行ったシーン

高齢の患者さんが大半を占める現在、手術を受ける中には認知機能が低下した方も沢山います。

手術は基本的に本人から同意書をもらわなければ行うことが出来せんが、その本人に正常な判断が出来ない場合はどうでしょうか?

その際は基本的に、患者さんに最も近い関係者(キーパーソンとも言います)と相談して同意をもらうことになります。

今回、認知症とわかった潮の母親のキーパーソンは、息子である潮であるので、彼の許可なくして手術をすることは出来ないはずです。

しかし大門は勝手に潮の母を手術してしまいます。

もっとも、そこはドラマですので、AIの診断に従った潮の判断と、自らの診断力に従った大門を対比を強調させることを狙ったための演出でしょう。

AIにばかりに頼らず自分の頭で考えるよう大門が潮に言ったシーン

第1話の解説でも触れましたように、現実でもAIの進歩は目覚ましく、2016年にIBMの開発したAI「ワトソン」が、診断の難しい特殊な白血病をわずか10分程で見抜き、それを基に治療を進める事ができ、大変話題になりました。

引用元: 2019年10月17日21時より、「ドクターX 第6シリーズ」が放送されました。特別編を除くと2年ぶりの放送となります。 ...

近い将来、画像などの診断に関わる科はAIにとって代わられるだろうとも言われています。 

ドラマの中で潮は、母の診断をAIに任せ、そのままアルツハイマー型認知症として治療を進めようとしました。

しかし、大門は潮の母が呈する症状から違う診断を考え、見事に的中させました。

いわばAIの診断に、ベテランの医師の診断が勝った形になりました。

実際、AIでなくとも採血やCTなどの検査だけに頼らず、先ずは患者さんの身体に現れる異常をしっかりと把握することが診断には大切です。

その上で各種検査を行い診断を絞って行けば良いのです。

私も時に検査に頼り過ぎてしまうことがあり、改めて自分の眼でしっかりと患者を診ることを思い知らされたエピソードでした。

現役の外科医が「ドクターX 第6シリーズ 第4話 」のまとめ

今回の記事では、「ドクターX 第6シリーズ 第4話 」のあらすじについて、簡単に説明し、現役の外科医目線で興味深かった点についての考察を行いましたので以下にまとめて見ましょう。

  • 生命より優先すべきものがある場合治療はどう進める?
  • 認知症患者を手術するには誰からの同意が必要か?
  • AIに頼り過ぎず自分の目で診察する事が大事?

がん(悪性腫瘍)の手術は、時として大きく元からあった機能を失う結果になりことがあります。

今回のように、自分の命よりも選手生命の方が大事だという患者の治療を行うことは容易ではありません。

標準的な治療から少し外れても、どこかで折り合いをつけて治療を進めるしかないでしょう。

また、認知症を有する高齢者の手術を行うことも多くなった昨今ですが、本人の判断力が乏しい際は、必ず家族などから同意書を取る必要があり、勝手に手術を行うことはできません。

また、第1話に引き続きAi対人間の構図が見られました。

今回も大門の下した判断や、潮が自ら考えて導き出した術式がAIの判断を上回り、改めて患者と向き合い、自分の頭で考え抜くことの必要性を感じました。

それでは次回、第5話は医療従事者の働き方と神経鞘腫がテーマになりますが、引き続き考察していきたいと思います。

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