現役の外科医が「ドクターX 第6シリーズ 第2話 」のあらすじを解説!

引用元:https://www.tv-asahi.co.jp/doctor-x/

2019年10月24日21時より、「ドクターX 第6シリーズ 第2話」が放送されました。

今回は人から人へ肝臓を移植する生体肝移植がテーマとして取り上げられており、お腹の臓器が専門の私としては大変興味が惹かれました。

前回同様、第2話の背景やドラマの提唱するメッセージを含めて、現役の外科医の視点から解説していきたいと思います。

なお、前回の記事はこちらになります。

引用元: 2019年10月17日21時より、「ドクターX 第6シリーズ」が放送されました。特別編を除くと2年ぶりの放送となります。 ...
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「ドクターX 第6シリーズ 第2話」のあらすじ

東帝大学病院に、遺伝性ATTRアミロイドーシスという病気に蝕まれたニシキグループCEOの二色が入院してきます。

超VIP患者でもある二色は肝移植手術を必要としており、手術が成功した暁には東帝大学病院に10億円の出資を約束します。

しかし二色の妻や子供は、家族に対して散々酷いことをしてきた彼に対して、肝臓を提供するドナーとなることを拒みます。

そんな中、家出をしていた二色の末娘、由理が同じく東帝大学病院に入院する彼氏、古沢を見舞うために現れます。

ドミノ師として貧しくも懸命に生きる古沢は、ステージ3の肝細胞癌のため、一刻も早く生体肝移植を行わなければならない状態です。

治療費を払えず退院させられそうになる古沢を見た、フリーランス外科医、大門未知子は彼を連れ戻し主治医となります。

由理は古沢に肝臓を提供したいという旨を大門に伝えますが、古沢とは家族でないためドナーになれません。

そうこうする内に、病院で由理を見つけた二色の担当医である外科医達は、彼女に父親のために肝臓を提供できないか説得を試みます。

貧しい彼氏と由理が付き合うことに反対する二色、そのせいで家出までした由理ですので、当然ドナーを承諾するはずがありません。

このままでは移植を必要とする二色と古沢、両者とも治療ができないという危機的な状況となってしまいますが、そこは凄腕外科医の大門、常識破りの発想で解決します。

由理の肝臓の一部を父親、二色に移植し、摘出した二色の肝臓を古沢に移植する、生体ドミノ肝移植をすることを思いついたのです。

摘出した二色の肝臓を古沢に移植することで愛する古沢が助かるのであればと、由理ドナーとなることを決意しました。

かくしてトラブルに見舞われつつも手術は成功し、万事うまく収まりました。

以上簡単にあらすじを紹介しましたが、今回は生体肝移植におけるドナーを巡る複雑な人間関係、そして生体ドミノ肝移植という大変稀な手術は、外科医としてとても興味深く感じました。

「ドクターX 第6シリーズ 第2話」で取り上げられた疾患

今回も以下に示すよう、様々な疾患が取り上げられました。

  • 遺伝性ATTRアミロイドーシス
  • 肝細胞癌と腫瘍内出血
  • 過小グラフト症候

どれもあまり馴染みのない用語だと思いますので、それぞれ解説していきます。

遺伝性ATTRアミロイドーシス

今回、ドラマの中で二色が患っていた「遺伝性ATTRアミロイドーシス」は、名前からだけではどの様な症状を来すかちょっとイメージしにくいでしょう。

ざっくりと説明すると、アミロイドと呼ばれる蛋白が臓器や神経にに沈着し、様々な症状をもたらす、アミロイドーシスという病気の一つのタイプになります。

「遺伝性ATTRアミロイドーシス」においては、アミロイドの元となる蛋白の大部分が肝臓で産生されるため、実際の治療もドラマ同様、肝移植が治療の中心となります。

肝細胞癌と腫瘍内出血

肝臓は人間のお腹の中で最も大きい臓器で、生命の維持には必要不可欠です。

そして肝臓にできる癌は、大きく分けて次の2つのタイプがあります。

  • 肝臓そのものから発生する癌
  • 他の臓器から転移して肝臓にできる癌

今回ドラマに登場した「肝細胞癌」は前者に含まれ、肝臓の細胞が癌になる病気です。

肝細胞癌は血液の流れが豊富なことが一般的で、ちょっとしたきっかけで癌の内部で出血することがあります。

これを「腫瘍内出血」と呼び、軽傷であれば止血剤の点滴などで様子をみることもありますが、時に致命的となった際は、緊急で出血の原因となっている血管をカテーテル治療で詰めたり、緊急手術で出血している癌そのものを切除したりします。

私のこれまで経験したケースでは、かなり大きな肝細胞癌から出血し、カテーテル治療だけでは出血を完全に抑えることが出来ず、続けて緊急手術を行い、最終的に肝臓の半分を切除したことがあります。

肝細胞癌の治療は、抗癌剤や手術での切除、そして基準を満たせばドラマ中の様に肝移植の適応になることまで、非常に多岐に渡ります。

過小グラフト症候群

生体肝移植では、肝臓の提供者(ドナー)の肝臓の全部を患者(レシピエント)に提供する訳にはいきません。

ドナー自身が提供した後も生命を維持できるよう、肝臓を一定以上残さなければいけないからです。

かと言って、提供した肝臓(グラフト)が小さ過ぎると、今度はレシピエントの生命を維持する機能をまかないきれず「過小グラフト症候群」を来してしまいます。

レシピエントはドナーの肝臓を移植する際、病気の肝臓(あるいは病気の原因となる肝臓)を全て摘出するため、移植手術後はドナーから提供された肝臓だけにその機能を依存するからです。

ドラマでは手術中に医療用AI(人口知能)から提供した肝臓が小さ過ぎると指摘されます。

大門は上手いこと対応策を考え最終的に過小グラフト症候群を回避することが出来ました。

実際の現場ではドナーの肝臓の大きさ、レシピエントに必要なグラフトの大きさを入念に計算しますが、元々健康なドナーの安全を考えより多くの肝臓をドナー側に残そうとすると、過小グラフト症候群は起こり得るものです。

「ドクターX 第6シリーズ 第2話」を見て興味深かったシーン

さて、ここからは現役の外科医である私から見て興味深かったシーンを解説していきましょう。

私は以下のシーンで特に興味を惹かれました。

  • ドラマ冒頭のドミノが倒れるシーン
  • 手術中に下大静脈損傷を来したシーン
  • ドラマ中を通じて表現されたドナー選出の難しさ

それでは順に解説して行きましょう。

ドラマ冒頭のドミノが倒れるシーン

今回、ドラマの冒頭で小児病棟の子供達がドミノ倒しをしているシーンが出てきます。

予告で今回のテーマが生体肝移植と知っていた私は、これは「生体ドミノ肝移植」の伏線だな、とすぐ気付きました。

ここで生体ドミノ肝移植とはなんでしょうか?

生体ドミノ肝移植とは

健康なAさん、その父親で肝移植が必要なBさん、AさんとBさんとは他人ですが肝移植が必要なCさんがいるとします。

AさんがBさんのドナーとなり、肝臓の一部をBさんに提供します。

そしてBさんから取り出された病気の肝臓を丸々Cさんに移植します。

Aさんはドナー、Bさんはドナー兼レシピエント、Cさんはレシピエントとなる、これが「生体ドミノ肝移植」です。

Bさんの病気の肝臓をCさんに移植して大丈夫なのか?と言う疑問があると思いますが、Bさんの病気の肝臓が、移植してもしばらくは大きな症状を起こさない、という条件であることがこの手術の大前提です。

なのでCさんはいずれ治療を必要とする症状を来す可能性があるので、Cさんにとっては緊急避難的な手術とも言えます。

本邦初の生体ドミノ肝移植もドラマと同じくドナー兼レシピエントは遺伝性ATTRアミロイドーシスの患者さんでした。

手術中に下大静脈損傷を来したシーン

肝臓の手術は数多くの外科手術の中でも専門性の高い手術の一つです。

特に今回テーマとなった生体肝移植ともなれば、肝臓手術の中でもさらに高難度な手術となります。

ドラマの中では、二色の執刀をしていた次世代インテリジェンス手術担当外科部長の潮が、肝臓を摘出する過程で「下大静脈損傷」を来してしまいました。

損傷した下大静脈とは肝臓の背中側に位置する体の中で最も太い静脈で、心臓と直接繋がっているため、傷付けるとあっという間に大出血を来してしまいます。

肝臓の手術は胃や大腸など他のお腹の臓器の手術に比べて数が少ない上に出血した際のリスクも高く、執刀する外科医の技量が問われます。

途中で大門が潮と交代し事なきを得ましたが、ここで2人の技量の差が浮き彫りになった感じでしたね。

ドラマ中を通じて表現されたドナー選出の難しさ

今回テーマとなった生体肝移植ですが、二色に肝臓を提供するドナーがなかなか見つからず、東帝大学病院のスタッフ達は手術に漕ぎ着くまで大変な苦労を強いられました。

臓器移植が盛んなアメリカでは、脳死状態の方をドナーとして、肝臓を患者さんに移植する脳死肝移植が主流です。

しかし日本では、脳死を人の死とするか否かについての感覚の違い、医療システムなどが理由で脳死肝移植は進まず、家族が肝臓の一部を提供する生体肝移植が移植医療の中心となってきた歴史があります。

2010年に改正臓器移植法施行後は脳死ドナーは増加傾向にありますが、それでもまだまだ生体肝移植が主流であることには変わらず、ドラマ同様ドナーの問題を常に抱えています。

引用元:一般社団法人 日本移植学会ホームページ

なお、アメリカで活躍されている移植外科医・加藤友朗先生が執筆された以下の書籍には、肝移植をめぐるノンフィクションのヒューマンドラマが描かれており、今回のドラマの背景にある移植医療や、生体肝移植のドナー選出ついてとても理解が深まります。

「ドクターX 第6シリーズ 第2話」のまとめ

今回の記事では、「ドクターX 第6シリーズ 第2話 」のあらすじについて、簡単に説明させていただき、現役の外科医目線で興味深かった点についての考察を行いましたので以下にまとめて見ましょう。

  • ドミノ倒しのシーンは生体ドミノ肝移植の伏線となっていた
  • 肝臓手術の難しさが浮き彫りになった手術シーン
  • ドラマ中を通じて表現されたドナー選出の難しさ

ドミノ倒しが生体ドミノ肝移植を示唆していたのは凄く上手い演出だな、と思いました。
非常に珍しい手術です。

私の母校で1999年に本邦2例目のドミノ肝移植が行われた際、地元で大きくニュースで取り上げられたのを覚えていましたので、懐かしく感じながら今回は楽しめました。

また、肝臓の手術は専門性が高い上に、生体肝移植ともなればその難易度はかなり上がります。

大門が過小グラフト症候群をどう回避するのか、下大静脈損傷をどう乗り越えるか、非常に緊張感溢れる手術シーンでした。

そんな大手術を成功させた大門ですが、あわや手術を失敗に導きかけた潮にその功績は全て譲ることになりました。

手術の腕は優れた大門ですが、あくまで組織には属したり組織での出世は望まず我が道を進んでいます。

今回の話の中心であった移植医療は、本邦においてドラマ同様にドナー選出など様々な問題を抱えており、脳死肝移植の普及が望まれるところでもあります。

それでは次回、第3話は舌癌がテーマになりますが引き続き考察していきたいと思います。

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