現役の外科医が「ドクターX 第6シリーズ 第1話 」のあらすじを解説!

引用元:https://www.tv-asahi.co.jp/doctor-x/

2019年10月17日21時より、「ドクターX 第6シリーズ」が放送されました。特別編を除くと2年ぶりの放送となります。

医療系ドラマは、ドラマであるがゆえ実際の現場と異なる描写が多く、医療従事者にとっては好みが極端に分かれます。

私は医療ドラマが大好きな方で、今回あくまで医療者としての視点を持ちつつ、楽しんで観させてもらいました。

ドクターXは毎回その時のトレンドを作中に反映しており、今回も例にもれません。

そうした背景やドラマの提唱するメッセージを含めて、現役の外科医の視点から解説していきたいと思います。

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「ドクターX 第6シリーズ 第1話」のあらすじ

東帝大学病院は、経営破綻の危機に瀕しています。

その状況を打開するために、300億円を出資してくれる海外医療ファンドの最高顧問、ニコラス丹下を副院長として招き入れます。

「選択と集中」を掲げ、副院長は不採算部門は容赦無く縮小もしくは削減し、経営が安定するよう次々と改革を進めます。

それと同時に医療用AI(人工知能)を病院に導入し、効率の良い治療も推進していきます。

フリーランス外科医、大門未知子も手術の腕を見込まれ、お決まりの勤務条件(手術以外の仕事はしない)で東帝大学病院に雇割れることになりました。

しかし、患者の診断と治療を巡って大門と医療用AIは対立するのでした。

以上が簡単なあらすじになりますが、アナログだが医師が直接診察し診断を付けていく過程と効率良くAIが診断と治療方針を立てる場面のコントラストなどが興味を惹きました。

「ドクターX 第6シリーズ 第1話」で取り上げられた疾患

ドクターX は医療ドラマですので、毎回何らかの疾患が取り上げられます。今回は以下の疾患が出てきました。

  • クラッシュ症候群
  • 肺塞栓症とDVT
  • パンコースト型肺癌

いずれも一般の方には馴染みがない病名になりますので、それぞれ簡単に解説していきます。

クラッシュ症候群

挫滅症候群とも呼ばれる疾患で、本邦では1995年の阪神・淡路大震災での災害医療の現場で注目されました。

瓦礫などに体が挟まれ圧迫された際、それらを単にどかして圧迫されて損傷した場所に対して処置をすれば救命できそうなものですが、実際はそう簡単ではありません。

瓦礫などに挟まれていた時間が長いと、筋肉等の組織がダメージを受け、その部位に毒素が蓄積されます。

それらの蓄積された毒素は、圧迫を解除すると同時に全身に放出され、不整脈を来たしたり臓器にダメージを与えたりと、致命的な状態を引き起こすことがあります。それを「クラッシュ症候群」とよびます。

ドラマで大門は、落石によって圧迫された鮫島の左手を一旦切断し、全身の血液に圧迫された左手の毒素が回ることを未然に防ぎ、後に左手を繋ぎ直すという荒療治をやってのけました。

もっとも現実で衛生面確保されていない野外で大門の行った治療法を取ることはまずありません。

肺塞栓症と深部静脈血栓症

東帝大学病院の食堂職員が、胸の痛みを訴えて倒れます。

心電図と胸のレントゲンを撮った後、導入されたばかりの医療用AIは「肺塞栓症」と「深部静脈血栓症」と診断しました。

先ず、「深部静脈血栓症」とは特に下肢の静脈の中に血栓(血の塊)が出来る病態です。

無症状のケースも多く見られますが、血栓の存在する足の腫れや痛み、熱を持った様な症状が出て検査をしたところ見つかることがあります。

脚の血管を超音波で見る検査(エコー検査)で診断することができます。

この下肢の静脈に出来た血栓は、肺まで飛んで「肺塞栓症」という病気を起こすことがあります。

こうなると胸の痛みや呼吸困難を引き起こし、時に致命的な状態になることもあります。

肺塞栓症は突然死の原因としても知られており、一般的には「エコノミークラス症候群」という名前で覚えている方も多いでしょう。

肺塞栓症を来した患者は胸のレントゲンで特徴的な所見をきたすこともあるので、ドラマの中で医療用AIは、胸の痛みの症状やレントゲンの所見から診断したのかも知れません。

パンコースト型肺癌(パンコースト腫瘍)

肺の先端(最も頭側)に出来た腫瘍をパンコースト腫瘍と言います。

腫瘍の出来る場所がら、頚部や胸壁に浸潤し、肩の痛みを引き起こしたり腕の神経を圧迫して腕の痛みや筋肉の萎縮を引き起こしたりします。

原因としては肺癌が多く、ドラマでは「パンコースト型肺癌」と紹介されておりました。

診断には大門が勧めていた様に胸部のCT検査や、どの程度肺以外の組織に浸潤しているか評価するためにはMRI検査が必要になります。

「ドクターX 第6シリーズ 第1話」を見て興味深かったシーン

さて、ここからは現役の外科医である私から見て興味深かったシーンを解説していきましょう。

私は以下のシーンで特に興味を惹かれました。

  • 大門未知子が魚を捌くシーン
  • 東帝大学病院の財政難に言及するシーン
  • AIの導入に関連したシーン

それでは順に解説して行きましょう。

大門未知子が魚を捌くシーン

ドラマの冒頭で大門がブラックバスを包丁で捌き、その見事な手つきにニコラスが感動します。

このシーンは大門の外科医としての技術が優れていることを暗に示唆しています。

手術の卓越した外科医の手術を指して「見事なメス捌きだ」と表現するの見たことがあるかも知れません。

「見事な包丁捌き」が大門の「見事なメス捌き」を示唆しているのです。

それでは実際の手術で外科医はどれくらいメスを使用するのでしょうか?

現在、手術の主役は電気メス(刃で切る器械ではない)や超音波凝固切開装置と言った、電気や超音波の振動を使用した器械に取って代わられております。

よって、鋭利な刃を持ったメスを使用するのは、ほぼ手術の開始時に皮膚を切開する際に用いるのみ(状況によっては細い血管などを切る際などにも使用)です。

「見事なメス捌き」を実際の手術で見ることはあまり無いのです。

因みに私は魚をうまく捌くことができません。もっとも調理の経験があまりないのが原因でしょうが…。

東帝大学病院の経営難に言及するシーン 

ドラマの冒頭で東帝大学病院の財政状況がグラフで示され、次の年度から借入金の返済が滞ると説明されていました。

一般の方には意外かも知れませんが、実際に赤字経営の病院は沢山存在します。

特に大学病院を始めとした巨大な病院は様々な科を設置せねばならず、中には採算が取れない部門もあります。

また、ドラマでは東帝大学病院医師一人あたりの年間売り上げは3500万円と言われていましたが、これは現実の大学病院における状況と比較的近い数字です。

ここでは大学病院の労働生産性の低さが示唆されており、「選択と集中」を掲げて赤字部門の切り捨てや附属病院の統廃合、さらにはAIの導入まで検討されます。

しかし現実には、大学病院では特殊な疾患などを利益度外視で治療しなければならない使命もあり、単に利益を追求することが難しいという背景もあります。

また、ドラマでも言われていた様、コストカットは時として医療の質の低下を招くことは実際にあります。

私自身も出来るだけ不要な検査や機器を使用しない様にしておりますが、やり過ぎると見逃しや手術のクオリティが下がるため、費用対効果のバランスに常々悩んでいるところです。

AIの導入に関連したシーン

ドラマでは東帝大学病院の経営改革に伴い、恐らく効率の良い診療を行う目的にAIが臨床現場に導入されます。

そして医師達はAIの診断に従い、手術もAIがナビゲーションするシーンが出てきました。

現実でも、2016年にIBMの開発したAI「ワトソン」が、診断の難しい特殊な白血病をわずか10分程で見抜き、それを基に治療を進める事ができ、大変話題になりました。

それ以来特に、AIの診断が将来医師の診断に取って代わるようになるのではないかと言われています。

しかしドラマでは、大門はAIの指示に従わず、最終的には彼女の立てた診断と手術方法がAIを上回り患者は助かります。

AIを用いた自動手術ロボットなども考案されていますが、解剖の個人差や手術前に予測出来ない事態が手術中には起こり得ることから、熟練した外科医をAIのナビゲーションが上回るのはまだまだ先ではないでしょうか。

「ドクターX 第6シリーズ 第1話」のまとめ

今回の記事では、「ドクターX 第6シリーズ 第1話 」のあらすじについて、簡単に説明させていただき、現役の外科医目線で興味深かった点についての考察を行いましたので以下にまとめて見ましょう。

  • 大門の包丁捌きに手術でのメス捌きが反映されているのか
  • 東帝大学は経営破綻の危機に瀕し改革を進めているが容易なことではない
  • 医療現場に台頭してきたAIだが大門の経験を上回ることは出来なかった

ドラマの冒頭での大門の包丁捌きは見事でしたが、実際の手術で包丁の様にメスを捌く機会はそう多くありません。とは言え、刃物をさばくシーンは出来る外科医を上手く演出できると私も感じます。

また、大学病院の経営破綻は現実でも起こりうるテーマでした。

しかし破綻を回避するために提供する医療のクオリティとのバランスを考えると、単にコストカットすれば良いという問題ではありません。

「選択と集中」と出てきましたが、病院も各自の特性に合わせて診療の選択を行い、ドラマでも言及された様、病院の統廃合を行うことなどは、解決策として現実でも必要不可欠でしょう。

そして最後に、医療用のAIはここ数年医療業界でも話題となっています。近い将来は特に診断を行う内科や放射線科はAIに取って代わられるのではと言われています。

しかし個人的には、手術に携わる分野でAIが経験のある医師に勝るのはまだまだ先だと思っています。

それでは次回、第2話は臓器移植がテーマになりますが引き続き考察していきたいと思います。

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